今月初め、「韓国で恋人などに勝手に婚姻届を提出されていたことを後になって知り、婚姻の無効を訴える事例が多発している」というニュースが話題になりました。日本でも、ストーカーや暴走した恋人が勝手に提出してしまうケースはあるのか? 弁護士に聞いてみました。
◆勝手に提出されることはありえる!
「ストーカーが暴走し、勝手に婚姻届を提出することはあり得ますね」と答えるのは、アディーレ法律事務所の篠田恵里香先生。
「役所では、婚姻届の記載や書類に不備がなければ、婚姻届を受理してしまうからです。なので『知らぬ間に結婚していた』という事態は生じえます」とのこと。
なんとも由々しき事態。実はあなたも勝手に婚姻届を出されていた、なんてことがあるかもしれません。
◆実際に提出されたら、どうやって取り消すの?
もちろん、それは犯罪行為ですよね!? と聞いてみました。すると、
「そうです。婚姻届を勝手に出す行為は、『有印私文書偽造罪』『偽造私文書行使罪』『公正証書原本不実記載罪』という犯罪が成立し、当然、このような婚姻は無効とできます。ただ、手続きは相当複雑で、『婚姻無効』の調停や、裁判等の裁判所の手続きを経て戸籍が修正されることになります」という篠田先生。
一度、提出されたものを取り消したり、戸籍を修正するのには裁判所を通す必要があるとのことです。「仮に、裁判で『合意があった』と判断されると、本当に結婚したことになってしまいますので、『結婚の意思はなかった』としっかり主張立証する必要」とも。こちらは被害者なのに、こんなに大変な思いをしなければいけないなんて……。
◆「不受理申出」で危険が回避できる
実際、過去にこのような事例はあったのでしょうか。
「ありました。過去、交際相手の男性が勝手に婚姻届を提出したうえ、執拗に『どこまでも探し出して殺す』と脅迫し続けたケースがあります。『危ない』と思う相手がいる場合は、役所に『婚姻届を受理しないでください』という『不受理申出』を提出しておけば安心です。
芸能人の中には、この申出をした方がいるなんて噂も聞きますが、少なくとも恋人同士の間では婚姻届を勝手に出されるような状況に陥らないことが大事ですね。」
ストーカーや過激な恋人に悩まされている人は、早めに警察や弁護士に相談するのがいいかもしれません。また、今はそのような心配はなくても、知っておいて損はない知識ですね。婚姻届は、是非素敵なパートナーと判を押して出したいものです。
取材協力:アディーレ法律事務所(東京弁護士会所属)